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時代の流れを読む 石原コラム
『CDSが株価大暴落の元凶!?』 著:石原 謙介
9月10月と金融市場は未曾有の大混乱に見舞われました。
米大手証券の破綻や大手生命保険会社の危機が伝えられたことをきっかけに、
株価は世界的に暴落の様相を呈し、特に日本は年初来高値の半値という水準にまで売り込まれました。
企業の解散価値以下の株価が付いてしまう銘柄が続出するという、何とも異常な事態でした。
様々な要因が重なり合ったがための暴落だったのですが、その過程で「一番の元凶」であるとして「CDS」なる単語が出てきたことにお気づきの方もいらっしゃると思います。
ただその報道内容が誤解に満ちているようなので、少しご説明したいと思います。
CDS ・・・クレジット・デフォルト・スワップの略ですが、なにやら横文字の連発で訳が分からないというところじゃないでしょうか。
高度な金融技術を駆使した商品なのですが、ここでCDSの仕組みを再度記してみましょう。
ある企業Aに対する債権(Aの発行する債券であれAに対する融資であれ)を保有する投資家Bは、
A企業が破綻した時に回収不能とならないように、第三者C銀行・証券・保険に幾ばくかの"保険料"を支払う見返りに、
Aが破綻した時にその債務を肩代わりさせるというものです。
BとCとの間の"肩代わり契約"は取引所などを通さず当事者同士の相対で行われるため、
また受けたCはその契約を次なるDに転売したり、DはまたEにという具合に"契約というブツ"が流通市場を回っていくため、
外からでは事態が見えないところに「すべての元凶はCDS」という、
日本人によくある「何かひとつを槍玉に挙げてみんなで安心する」という背景が醸成されていったのでしょう。
具体的に説明しましょう。
破綻した米大手証券リーマンのCDSが悪役として登場し、
そのCDS残高が何千兆円とあり、そのほとんど全損になると伝えられ、エライコッチャ!ということで、
「じゃあ他の企業のCDSはどうなんだ?」で不安心理が高まり大暴落に至ったというのが大方の解説です。
何千兆円と言っても、それは上に書いたように転売・転売を重ねられた言わば"出来高"の数字なのです。
ですから素の原資産はせいぜいその何十分の一ぐらいなものです。
だからリーマンCDSの精算決済期日は何の波乱も無く通過しました。
つまりCDSは商品として機能を果たしたのであり、"暴落を惹き起こした欠陥商品"ではないのです。
そして大事なことは、企業A(色々な企業)の倒産リスクが高まったから不安心理が増幅したのではないと言うことです。
では何がここまでの阿鼻叫喚とも言うべき換金売り・暴落をもたらしたのでしょうか?
リーマンは確かにAだったのですが、同時にBでもCでもあったのです。
Aはいいですよね、「ツブれたんだから後は煮て食おうと焼いて食おうと・・・」の立場です。
でも特にCの世界ではリーマンはかなりのシェアを持つカウンターパーティー(市場参加者)だったのです。
それが突然いなくなったのです。さあーいけません。
いざという時にはリーマンが面倒見てくれると思っていた参加者たちは、
気が付けばあたりを見回してCやDやEのあっちの銀行、こっちの証券や保険はダイジョウブか?
金を貰いに行ったらツブれていなかったとか、いても支払い能力が無いとかってことになりはしないかで、
金融機関が金融機関を信用出来ない疑心暗鬼に陥ったのです。
となると、とにかく手元に現ナマを置けということで、ドル資金がつかみ合いの取り合いになって、
ドルLIBORレート(ロンドンの銀行間取引レート)がハチャメチャな急上昇を起こすことになったのです。
世の中の資金の大きな流れを決めるのは金利です。株ではありません。
その大元の銀行間市場が機能不全になっては、いくら株が下がって配当利回りが上昇しようと、
基準となるものが訳が分からない状態では金利裁定など働くはずもなく、買いが入らない中を転げ落ちて行ったと言うところでしょう。
直近で日米とも株が7000台から9000台に戻ったのは、数々の施策が打たれてLIBORが元の鞘に収まったことが一番の要因でしょう。
少し本題からはずれましたが、要は参照企業A達の経営状態が危機を惹き起こしたのではなく、
BやC,D,E間の"カウンターパーティー・リスク"が火を噴いたということです。
日本では最近も週刊誌なんかで「CDS危機アブナイ企業25社」みたいなタイトルの記事が出たり、
ソフトバンク株がCDSネタで急落したりしたので、そっち(A達)に目が行きますが、
今回の暴落の実態はそういうことではないのです。
CDS参照企業としてリーマンと、カウンターパーティーとしてのリーマンの区別がついていない人がほとんどです。
米大手生保AIGはその胴元の親玉みたいな存在で、その請け負った保証が巨大過ぎてツブせなかったと言われています。
米GSE2社(住宅金融公社)が9月に公的管理化に置かれました。
ここの発行する債券の残高は米国債よりも巨額です。
当然GSE2社を参照企業とするCDSも巨額です。
公的管理はCDSの世界では"倒産事由"に当たります。
一斉に元利金支払の権利を行使されたら・・・、払う金なんかありません。
あの時米政府高官が日本の財務省を飛び越えて、日本のメガバンクなどに異例の直接接触したのは、
行使するなよということだったのかも知れません。
コラム執筆日:2008年11月
著:石原 謙介